熊本地震が発生して約1か月が経過しました。東北地方(東日本大地震)に続き九州地方でも大きな地震が発生しました。
私はこれは神様が「日本の中心地で大きな地震が発生した場合の備えは十分ですか?」と、事前に教えてくれているように受け止めています。
今回のテーマは「地震に強い家」です。RC造(鉄筋コンクリート造)のメリット、デメリットを認識した上で、耐震性が高いとされるRC造ビルを住宅用にコンバージョン(リノベーション)した当家である『4階建てRC造住宅』の地盤や基礎構造、杭基礎、地下室と上屋が一体となった建物構造の強さを説明します。(→ブログ著者プロフィール)
目次
~このリノベーションブログの概要(30秒)~
1.RC造4階建て住宅の断面詳細図、
本日で連載138回目の本ブログですが、地震に関連して述べさせて頂く上で、初めて構造関係の図面を提示させて頂きます。
図面だけでは意味が分かりにくいので簡単に説明します。
上述の「断面詳細図」では、3階は「居間・食堂」、4階は「寝 室」という文字が見えますが、私が中古ビルを購入した際は前フロアがタイルカーペット敷きの事務所でした。
ぱっと見ると5階建ての建物に思えますが、「Z1」 と書かれた場所がGL(グランドレベル=地面)となっており「物置・機械室」があるフロア(Z1~ZBの間)が地下室です。
2.地下室付きRC造4階建て住宅の構造、配筋詳細図
「断面詳細図」に続き「配筋詳細図」で建物全体を見てみます。
素人コメントですが、コンクリートの中に入っている鉄筋配筋が見えますと、建物全体が鉄筋コンクリート造(RC造)なんだなと実感できます。なんだか頼もしい構造です(笑)。
3.地下室付き住宅の耐震性
ここで「地下室付き住宅」の耐震性について説明します。
建築基準法では、建物の自重による鉛直方向の力(鉛直荷重=長期応力と風や地震時の水平方向(水平荷重=短期応力)を考慮した耐力構造を建物に求めています。
地下室は地下にありますので、常に土圧(長期応力)を受けていますが、土圧は地震の横揺れ(短期応力)よりも数倍大きいのです。
1点目のポイントとして、地下室はこの「土圧」を基準に設計・施工されていますので、地震の際、地下室そのものは地震の力に対して十分な耐力があることになります。
よって「地下室は地震に強い構造物」ということになります。
4.地下室と上屋が一体となるメリット=地震に強い!
地震のタイプ(突き上げ or 横揺れ)にもよりますが、住宅の倒壊がなくとも、上屋が基礎からずれてしまった被害が地震時には散見されます。これは地震時に地面が揺れますが、建物は元の場所に残ろうとする慣性がありますので、基礎と上屋に横方向の力が加わった結果、上屋が基礎から外れた形となったものと考えられます。
ここで2点目のポイントですが、地下室部分の構造が上屋(1階以上)と一体化されており、このビルの地下室が基礎を兼ねた構造となっています。
地下室は普通の基礎と違って地表面付近だけでなく、地下3m程度までの深さがあります。そのため地震の際、地下室は地面と一緒に揺れます。
よって地下室と上屋が一体構造になっていると「地面の揺れ」と「地下室の揺れ」と「建物の揺れ」が等しく起こり、基礎と上屋の継ぎ目がズレて上屋に被害が生じる可能性が小さくなります。
上述2点、つまりA)堅牢な地下室と、B)その地下室と一体化された上屋のある建物は、相対的に地震に強い建物となります(だからと言って絶対安全という意味ではございません)。
5.鉄筋コンクリート造(RC造)のメリット、デメリット
ここでRC造建物のメリット、デメリットを整理しておきます。
A)RC造のメリット
・耐火性
・耐震性
・対不朽性
・防音性
・耐破壊性
RC造(鉄筋コンクリート造)の建物は鉄筋で補強された人工的な石による建物といえます。そのために、燃えない、なかなか壊れない、腐らない、重量が重く遮音性が高いと言えます。つまり頑丈な建物です。
木造の住宅でも基礎はRCで出来ているのもこのためです。
B)RC造のデメリット
・値段が高い
・重量が重い
・クラック(ひび割れ)が入り易い
・熱を通しやすい
RC造のデメリットとしては、まず第一に値段が高いことです。木造住宅の2倍のコストがかかります(木造は坪50万円とするとRC造は坪100万円します)。
次に重量が重いことから、床、柱、梁、基礎、基礎の下の杭などもしっかりと作る必要があります。
またコンクリートはセメントが固まる際に収縮によりクラックが入り易く、また頑丈ゆえ柔軟性に欠け、地震や台風で大きな力が加わると変形出来ずひび割れてしまうことがあります。
あと意外かもしれませんが、コンクリートは熱を伝えやすいため断熱材が必要となります。
6.RC造4階建て住宅の杭基礎の場所
RC造のデメリットで述べた通り、RC造の建物は自重が非常に重くなります。
そのため、余程の強固な地盤の上でない限り、杭基礎を用いて建物全体が自重で沈下しないようにする必要があります。
よって上述「2.」内の図面をご覧になられた方で気付いた方も多いと思いますが、建物の下部に円柱のような構造が見えます。これは基礎杭となっています。
面白い図面がありましたので掲載します。
基礎伏図とは、住宅の基礎の配置や形状を表示した平面図のことです。
これを見るとひし形の建物の四隅に基礎杭が打たれていることが分かります。
このように柱や梁で建物を支える構造で、接合する部分がしっかり固定(剛接合)されているものをラーメン構造といいます。
本ブログの狭小ビルで採用している鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨造が具体例で一般には中高層マンションで用いられることが多いとされています。当ビルのように一般的な工法では、室内に柱や梁などが張り出すことになります。
7.RC造4階建て住宅の基礎杭の長さ(深さ)
更に面白い図面が見つかりましたので掲載します。
杭の深さが分かる図面です。基礎杭はGL(グランドレベル=地面)から3,950mm(3.95m)下がった場所を杭の先端として、GL-13,500mm(13.5m)の深さまで打ち込まれていることが分かります。つまり地面から13.5mの深さにある地盤が固い場所(支持層)まで基礎杭が打ち込まれているということです。
大地震において懸念されることの一つは、土質が砂を多く含むような土地で発生する「液状化」現象ですが、基礎杭方式で建物が地盤(支持層)から直接支えられていれば、一応、大地震で家が傾く可能性は小さいと考えています。少し安心です。
8.ボーリング調査結果。支持層と基礎杭長
7.に於いて「支持層まで基礎杭が打たれている」と述べましたが、支持層がどの深さにあるかはボーリング調査の結果で判明しておりますので掲載します。
このビルを建設されたのは誰でも知っている大手ゼネコンなのですが、ボーリング図に基礎杭の「絵」を追記されている点は、素人にも分かり易くて嬉しいですね。N値60以上の場所まで基礎杭が到達していることが分かります。
9.所感とRC造関連書籍
4月に熊本地震が起きてTVで現地の報道を見ましたが、地震の多い日本こそ、耐震性の高い住宅が普及するような政策を、今まで以上に積極的に推し進める必要があるように感じています。
私は、建築・土木のプロではありませんので、このブログを書くようになって、書籍を購入して鉄筋コンクリート造や建築基礎というものについて勉強を開始し ました。少しずつではありますが、RC造住宅(鉄筋コンクリート造住宅)は地震に強い家であることを技術的に理解し始めた次第です。
勉強し始める と、施工図の読み方が分かってきて、意外に面白いものです。現在は、ゼロからはじめる建築知識 3 鉄筋コンクリート造と建築基礎―土を掘る技術と固める技術という2冊の書籍を購入して読んでおります。RC造住宅だけでなく鉄骨造も検討されたい方は、ゼロからはじめる建築知識シリーズから興味のある建築方式を選ばれると良いと思います。
いつも最後までお読み頂きありがとうございました。(続く。次の記事『(139)横引きロール網戸(マドロール)』へ)
リノベーションブログ著者からのご挨拶/狭小中古ビルを『2割』値引きで購入後、住宅にコンバージョン(リノベーション)して住んでいます